相続について

相続の対象となるもの

相続とは、故人(被相続人)の財産的権利と義務を、故人の一定の親族が引き継ぐことを言います。相続の対象となるものは、現金、預貯金、有価証券、不動産などプラスの財産だけではなく、借金やローンなどマイナスの財産も対象となります。

相続人

例えば、結婚して子供が2人いる方が死亡した場合、相続人となるのは、配偶者と子供2人です。相続分は、配偶者が2分の1、子供が4分の1づつとなります。もし夫婦間に子供がおらず、故人の両親が健在である場合は、配偶者が3分の2、両親が6分の1づつ相続することになります。
子供がおらず、故人の両親もすでに亡くなっている場合、相続人となるのは、配偶者だけとは限りません。もし故人に兄弟がいれば、その兄弟も相続人となります。さらに兄弟も死亡している場合は、故人の甥や姪が相続人となります(代襲相続)。

このように、相続人の範囲と相続する割合は法律によって明確に規定されています。しかし相続する割合に関しては、相続人全員が同意することによって変えることができます。また、故人が「遺言書」を残していれば、基本的にはその遺言書のとおりに相続財産を分割することになります。

遺産分割

故人が亡くなった後、まずは相続財産と法定相続人を確定する必要があります。また遺言書の有無も確認しなければいけません。遺言書がなければ、確定した相続人全員で相続財産の分割方法について協議します。これを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議がまとまれば、遺産の配分方法を記した「遺産分割協議書」を作成します。この遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押さなければいけません。
問題は、この遺産分割協議がまとまらない場合に発生します。例えば、相続人のうち、誰か一人が「ほかの相続人より多く財産を分けてほしい。」と考えることにより、相続人間の紛争に発展することがしばしばあります。具体的には、

「年老いた両親の世話は次男である私がしていた。遠くに離れて暮らしていた長男や長女と平等に財産を分けるのはおかしい。」

「兄は、大学へ進学させてもらったが、私はそのために大学進学をあきらめざるをえなかった。その分、兄より相続財産を多くもらえるはずだ。」

というようなケースで不満を持つことは、よく聞く話です。また、仮に兄弟間で分割協議がまとまりそうだったとしても、配偶者など第三者の意見により、まとまらないこともよくあります。
ほかにも、相続人間の関係が希薄であったりすると、連絡をとるだけで大変な手間と時間を要する作業になります。
相続人間で紛争に発展した場合、あるいは発展しそうな場合は、弁護士に相談することをお勧めいたします。

遺留分

遺留分とは、配偶者、親、子供に認められている最低限相続できる権利です。兄弟姉妹には遺留分はありません。例えば、亡くなった夫が遺言書で「妻と子供には一切財産を分け与えない」と書いていたとしても、相続人となる妻と子供には最低限の相続分が保障されています。遺留分は、法定相続分の2分の1であると考えてよいでしょう。
遺留分とは、法律用語で「形成権」と呼ばれるものに当たり、相続人が一方的に意思表示することによって権利関係を変えてしまうことができます。遺留分を求める意思表示(遺留分減殺請求)は、内容証明郵便を相手方に送って伝えるのが一般的です。

遺言書

被相続人は、遺言書を書いておくことにより、自分が亡くなった後の財産の分割方法や配分割合を指定しておくことができます。また、分割方法や配分割合を決めた理由や思いも記載しておくことができます。これを「付言」と言います。
遺言書の形式にはいくつかの書き方が存在しますが、通常、遺言書を作成する形式は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。

自筆証書遺言

紙とペンさえあれば作成することができます。遺言書に記載しておきたい内容のほか、日付、名前、押印があれば有効です。作成するための費用がかからず、また遺言書の内容を秘密にしておくことができるという点が特徴と言えます。
簡単そうに思えるかもしれませんが、単純にそうとは言い切れません。自筆証書遺言は全文自書しなければならず、PC等を使用して印刷したものは無効となります。また訂正の方法まで法律で厳格に定められており、書き方に不備があれば、遺言書そのものが無効となってしまいます。
故人が亡くなった後、自筆証書遺言を発見した人は、まず家庭裁判所に届け出て「検認」の申し立てをしなければいけません。検認とは、遺言の内容を確認し、偽造・変造を防止する手続です。遺言書が封印されていた場合、発見者は勝手に中身を見ることはできません。家庭裁判所で相続人全員が立ち会った上で開封しなければいけません。

公正証書遺言

公証役場で法律のプロである公証人が遺言書の内容や書き方を精査し、作成します。そのため、方式の不備によって無効になることがありません。また原本を公証役場で保管するため、偽造や変造のおそれがありません。
公正証書遺言を作成するためには、遺言者の戸籍謄本や印鑑証明書などをそろえる必要があります。また公証人に作成手数料を支払う必要があります。また弁護士など専門家に遺言原案の作成や公証人とのやり取りを任せた場合、専門家へ支払う報酬も発生します。
公正証書遺言の場合、自筆証書遺言で必要だった検認手続は不要です。そのため、相続人にとっては、相続手続きの負担が軽減されることになります。

遺言書を残す最大の目的は、遺産相続に絡む紛争を未然に防ぐことです。方式の不備で無効になったり、内容が十分に検討されておらず、相続人が不満や不信を持ち、紛争に発展するようなことがあっては遺言書を残す意味がありません。当事務所では、最も信用力の高い公正証書遺言の作成をお勧めしております。

生前サポート(成年後見、任意後見契約ほか)

成年後見制度

高齢者の中には、認知症が進むなどして意思能力(判断能力)が不十分になる人がいます。そのような方々を保護するための制度を「成年後見」と言います。成年後見人は、保護すべき人の財産を管理するほか、契約などの法律行為を代理することができます。
成年後見人は、一定の範囲内の親族等が家庭裁判所に選任の申し立てをすることによって、選ばれます。親族だけではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士など専門的な資格を有する人がなることもできます。
このように家庭裁判所の手続きを経て後見人を選任してもらうことを「法定後見」というのに対し、まだ正常な意思能力がある段階で自ら後見人を選んでおき、当事者間で契約を結んでおくことを「任意後見」と呼びます。

任意後見契約

任意後見契約とは、本人が十分な判断能力を有しているうちに、親族や弁護士などの専門家等と契約を結んでおくことです。この契約により、将来、認知症になるなどして判断能力が不十分な状態になった時、自分に代わって財産の管理や各種契約の代理をしてもらうことができます。自分が信頼している人を自ら選んで将来を託せるという点で、法定後見と異なります。
任意後見契約は、公正証書で結ばなければいけません。判断能力が衰え、任意後見の事務が必要になった段階で、本人の同意を得た上で親族や任意後見人となる人が家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てます。任意後見監督人とは、その名の通り任意後見人の仕事を監督する人です。任意後見監督人は、任意後見人がきちんと仕事をしていなかった場合、任意後見人を解任する権限を有しています。

遺言と同じように、任意後見制度も老後の安心を守るための制度です。老後に不安を抱えている方は、任意後見契約を信頼できる人と結んでおくことをお勧めいたします。

ホームロイヤー契約

少子高齢化が進む中で、高齢期に生ずる問題は医療や介護の問題だけではありません。近年、悪徳商法や振り込め詐欺など高齢者を標的とした犯罪が増加する傾向にあります。これらの問題から高齢者を守るためには、医療や介護の事業者だけではなく、法的な知識を持った専門家も含めてトータル的かつ継続的に支援する必要があります。
ホームロイヤー契約とは、かかりつけのお医者さんのように、気軽に弁護士と相談することができる契約です。弁護士が福祉・医療機関と連携し、高齢者をさまざまな角度からサポートします。
「判断能力は衰えているつもりはないけれど、何かあった時には相談したい。」
「訪問販売業者が頻繁に訪ねてくるのだが、自分一人では対応が難しい。」
「現在、一人暮らしで、もし倒れたら誰にも知らせることができない。定期的に連絡を取り合う人がいたら助かる。」

このような方は、ぜひホームロイヤー契約の活用をご検討ください。